女性「9条の会」ニュース44 号 2018 年4 月号

 

1面  

   これほどまで人権に無知な人たち                                  浅倉 むつ子(早稲田大学教授)

                                                                

  腐敗しきった安倍政権の「お友だち」の不祥事が次々に露呈するなか、ついには財務省事務次官が、女性記者に、聞くに堪えない悪質なセクハラ言動をしていたことが判明した。 次官は、録音証拠があるのに「自分はやっていない」と言い張り、政権側は「加害者」の人権を盾に、「被害者」が名乗り出ないかぎり確証はない、という。しかも名乗り出る先は、財務省が金を払っている顧問弁護士だ。守ってもらった次官は図に乗って、「反撃の訴訟をするぞ」とメディアを脅したものの、形勢が悪くなると辞任して高額の退職金を手にした。政権に近い政治家たちは、被害者に「はめられた」だの、情報をメディアに流すのは「ある意味で犯罪だ」だの、抗議する女性国会議員は「セクハラと縁遠い方々」だの、言いたい放題である。
 セクハラが人権侵害であることにここまで無知な人々がこの国を動かしているのだと、毎日、驚愕の連続である。これでは「女性活躍」の本気度など、まったく疑わしい。はっきりしたのは、「こんな人たち」が憲法九条を変えようとしていることだ。これは、驚愕という生易しい感覚を通り越して、底知れぬ恐怖である。なぜなら、私たちを取り巻く法の状況は、すでに憲法改正を先取りしているからだ。2013年の「特定秘密保護法」、2014年の「閣議決定」2015年の「安保関連法」、2017年の「共謀罪」法。
 このように、かつて日本を戦争に導いた「悪法」のほとんどすべてが、もはや名前を変えて出そろっている。その仕上げとしてねらわれているのが、憲法九条の改正である。現在はまだ、九条が歯止めとして働いている。しかし九条の二に「自衛隊」を書き込めば、歯止めはなくなり、軍事優先時代がすぐやってくるのは必定である。軍事予算は増大し、徴兵制は違憲ではなくなり、軍事機密は完全に非公開となり、学問の自由も制限される。私たちの暮らしは大きく変わるだろう。人権に無知な人たちによる、教育や家族への統制は、すでに進行している。自民党は、数年前に、教師の政治的中立性を監視するサイトを立ち上げた。「密告サイト」だ、思想調査だ、と批判されて、サイトは閉鎖されたが、その後も、性教育の授業を「不適切だ」と非難し、前川喜平さんを講師に呼んだことに難癖をつけている。
 道徳教育を強化し、「家庭教育支援法」も準備して、個人の尊厳を保障する憲法二四条改正をもくろんでいる。長く守られてきた平和な暮らしは、いま、大きく変えられようとしている。「こんな人たち」に、それを許すわけにはいかない。
                                                             (九条の会世話人)

 
                                       

2面〜6面              女性「9条の会」憲法学習会      
                                                                                             
日時 2018年4月19日  於 文京区立男女平等センター
 
                                軍隊と自衛隊どこが違う

                    
           
 講師 種田和敏さん(城北法律事務所 弁護士)


■自衛隊の現状と憲法改正
自衛隊の現状と憲法改正
 一般には被災現場で救助活動をする自衛隊が、〝自衛隊イメージ〟なのではないでしょうか。そこで「自衛隊ありがとう」という世論が高まりました。その後も日本各地でさまざまな災害がありますが、自衛隊が迷彩服を着て、救助活動に一生懸命になっている姿が記憶にあると思います。自衛隊というと、銃を撃っている姿よりも、多くの人のイメージは〝何かあったときに助けてくれる頼もしい自衛隊〟〝災害救助で頑張る自衛隊〟でしょう。それを利用して「自衛隊はこんなに頑張っているのだから、憲法違反などと言われてそしりを受けるのはおかしいではないか」という発言が出てきます。例えば、安倍さんは三月二五日の党大会で「いよいよ結党以来の課題である、憲法改正に取り組むべき四項目について議論を重ねてきた。九条も改正案をとりまとめる。自衛隊は国民を守るために命をかける。しかし未だに多くの憲法学者は彼らを憲法違反だと言う。憲法に自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とうではないか」という演説をしています。
 少し前までは過半数が「自衛隊は違憲」と言っていたのですが、震災以降は「憲法違反ではない」という意見が増えています。
 自衛隊にいいイメージを持つ人は、若年層になればなるほど多くなっています。ただ、知って欲しいのは自衛隊の本来の任務です。

 自衛隊法 第三条 第一項(自衛隊の任務)には
 「自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。」

と書かれています。自衛隊は我が国を防衛するのが主任務であると書いてあるわけです。災害救助ではないのです。にもかかわらず災害救助にいそしむ自衛隊がクローズアップされているのです。
 自衛隊は災害救助の訓練を受けているわけではなく、あくまでも戦争のための訓練を受け、装備を持っているのです。「自衛隊の中に災害救助の部隊はあるのか」と聞かれることがありますが、それはないのです。災害時は、平時は戦闘訓練をしている人が、かり出されて救助に当たっているのです。消防のレスキューの訓練を受けたり、災害用の装備を持てば自衛隊はもっと災害に役立つと思うし、もっと多くの人の命が救われると思うのです。


■増加する防衛費─自衛隊は世界最強の軍隊と同じ力を持つ軍隊

                        

 日本の防衛費は5兆円を超えました。一度下がったのですが、第2次安倍政権の時以降増え続けています。高い装備を備えた兵器を新調しているので費用がかさんでいるのです。オスプレイも配備する予定ですし…。
 では自衛隊はどういう活動をしているかというと、2015年9月に安保法制が成立しました。国会の前に10万人が集まって反対しましたが、結局成立しました。あの法律が成立してから二年半が経ちます。今現在はアメリカを中心に世界各地でいろいろな国の軍隊と一緒に訓練をしています。カリフォルニアやアラブなどに行って、アメリカの訓練の一翼を担う形で訓練をしています。自衛隊はアメリカの指揮下に入ってその一部隊として訓練を行っているのが現状なのです。
 今、自衛隊と米軍の指揮命令関係は全部統合されているのです。アメリカで指令を出すと自衛隊に直通で繋がります。つまりすぐに指揮命令関係ができるのです。だからアメリカ空軍の極東の指揮は横田基地にあります。同じように航空自衛隊の指揮所は横田基地です。システムが繋がり、一体化しているのです。今アメリカが横田基地にオスプレイの配備を進めていますから、来年には自衛隊のオスプレイが日本の上空を飛ぶようになるでしょう。日本の自衛隊はアメリカ軍と一体になってきているのです。

陸上総隊─練馬には朝霞駐屯地がありますが、今年の4月、そこに陸上総隊ができました。実は第2次世界大戦の時に、陸軍が暴走して不毛な戦争に突入したという側面は否定できないので、その経験を踏まえて、戦後陸上自衛隊ができるときに、陸上自衛隊を一手に掌握するトップの存在を置かなかったのです。航空自衛隊には航空総隊、海上自衛隊には自衛艦隊があって、総指揮をしているのですが、陸上自衛隊にそのようなものを作ると、又権力を乱用して暴走してしまうかも知れないので、五つの地方の方面隊に分けて、5人が陸上自衛隊を指揮するような体制を取っていたのです。それをやめて陸上総隊指揮官の指揮下に部隊を集合させるということになります。つまり戦前の反省を忘れたふりをして、1人に集中させたということです。より戦前の帝国陸軍に近づいたということです。

水陸機動団─これは中国や北朝鮮に面している島が乗っ取られた時に奪還したりするための、水中も陸上の走行もできる機能を持った部隊です。もう既に、長崎ではアメリカと一緒にそのような訓練をしていました。それをはっきりとした形にして水陸機動団をつくりました。装備もアメリカと同じように、水辺から砂浜に上がって行ける水陸両用の戦車のようなものを一昨年購入しています。他にもさまざまな兵器、装備を予算化しています。最近は旧帝国陸軍と同じ形を、脇目も振らず、恥じらいもなく進めているのです。

長距離の射程を持つ巡航ミサイル─飛行距離が長く、500キロぐらいは軽く飛ぶミサイルの導入を今政府は検討しています。自分の国を守るなら500キロの射程を持つミサイルを持つ必要はないのです。明らかに他国を攻撃するような装備も配備しているということなのです。

戦略型爆撃機─自衛のためのものではなく、遠くに飛んでいって爆弾を落としていくものです。このような攻撃に特化した兵器は憲法上持ってはいけないのです。

攻撃型空母─横須賀にいるドナルド・レーガンは空母です。自衛のためなら自分の領土内から飛ばせば良いのですが、船に戦闘機を乗せて敵国の近くから飛ばして攻撃する、それが空母です。日本は攻撃型空母を持っていないのですが、日本では護衛艦と呼んでいるヘリコプター搭載型空母は持っています。ヘリコプターなので攻撃型空母ではないというわけです。オスプレイも乗せられます。長さは250メートルです。アメリカの空母は330メートル、中国の空母は300メートルですかちょっと小ぶりですが、二五〇メールあれば最新型のF三五bという戦闘機は普通に発着ができます。ですから今でもヘリコプターから「多用途防衛型空母」に代えようという動きがあるのです。「多用途防衛型」とは言葉の遊び、まやかしですね。それが今の自衛隊です。
 実際の訓練もアメリカと一緒のことをやり、装備もアメリカと同じものを持っています。今まで持ってはいけないと言われた長距離ミサイルや攻撃型空母に類するものも持っているし、それを本格的に運用できるような変更の検討もされているということで、まさに自衛隊は「軍隊」です。世界最強の軍隊と同じ力を持った「軍隊」なのです。


■言葉のまやかし「実力組織」

 自衛隊が憲法違反だと言われた過去の裁判、長沼裁判は1970年代のことですが、40年の間に装備は全く変わっています。その時ですら自衛隊は軍隊であり憲法違反だと指摘されていたのです。
今の自衛隊が軍隊でないというのなら、何を軍隊と呼べば良いのですか。でも政府の見解は軍隊ではなく「実力組織」と言っています。「自民党憲法改正案全文」には、一応九条の1項2項は残して、九条の2を追加するとしています。

九条の2には
 「前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高指揮監督者とする自衛隊を保持する」

と書いています。軍隊組織ではなく、戦力ではなく、「実力組織」としての自衛隊なのです。九条には「戦力を持たない」となっているので、「軍隊は持っていない」というのが自民党の見解なのです。
 このような自衛隊を、憲法を変えて明記しようという人が今この国の総理大臣なのです。自衛隊が本来の装備をフル活用させるために憲法を変えようとしているのだと私は考えています。


憲法とは何か

 あすわか(明日の自由を守る若手弁護士の会)では、全国各地で憲法カフェを開いていますが、みなさんに少しでも憲法を理解して欲しいと考え、わかりやすくするために紙芝居をつくりました。


紙芝居「王様をしばる法」(抜粋)

 むかしむかしあるところに悪い王様がいて、 気に入らないことがあると、人々を牢屋に入れたり、殺してしまったりしていました。人々は、王様を怒らせたら殺されてしまうかもしれないので、何でも我慢していました。街では、王様の手下が聞いているかもしれな いので、王様の政治や生活の不満について話すことができません。
 人々はついに立ち上がり悪い王様を捕まえ、新しい王様に政治をしてもらうことにしました。新しい王様は、「王様は、国民に自由を与える。」 「王様がいいと言ったら、本を書いてもよい。」 「王様がいいと言ったら、街でデモをしたり、演説をしたりしてもよい。」というきまりをつくり、「憲法」と名づけました。
 しかし王様は、王様に文句をいうデモを禁止したり、王様を悪く書いた本は、燃やしてしまいました。街の人たちも、王様の顔色ばかりうかがうようになりました。やがて人々は、何でも我慢するようになりました。
  人々は話し合いました。 「王様から自由をもらったはずなのに、前の悪い王様と同じじゃないか」「自由は王様にもらうものじゃない。生まれたときから持っているものだ」「だったら、王様が好き勝手できないように、 王様を縛るきまりを作ったらいいじゃないか。」 人々は、王様の権力をしばる新しいきまりを作ることにしました。 そしてこの新しいきまりに、王様が作ったのと同じ「憲法」という名前をつけました。
 やがて時は経ち、王様の時代から、選挙で選ばれた人たちが政治をする時代へと変わりました。でも、街から問題がなくなったわけではありません。生活が貧しくて困っている人、無実の罪で捕まってしまう人。政治をする人たちを批判したら、自由に行動できないように、こっそり監視されてしまうかもしれ ません。こんなとき、政治をする人たちが憲法を守ってくれるのを待っているだけでは、なにも変わりませ ん。政治をする人たちが憲法を守るかどうか、私たちが見守っていかなくてはならないのです。そして、もし政治をする人たちが憲法を破ってしまったら、憲法をきちんと守らせるために、私たちが声を上げなくてはならないのです。

日本国憲法(現行憲法)第九九条
  「天皇又は摂政及び国務大臣、国会  議員、裁判官その他の公務員は、こ の憲法を尊重し擁護する義務を負う」

 憲法を守るのは、権力を行使する公務員であって、 国民はしばる人だから記載されていない。自民党はそれを改定して102条として、「すべて国民は、この憲法を尊重しなければならない」としています。
 「立憲主義」とは政府が憲法にしばられて政治をすること、憲法が政府を制限することを言います。王様を縛っている、その縛っていること自体が「立憲主義」という言葉にあらわされます。今の憲法で一番大切なところです。

立憲主義とは

 憲法は私たちが政府を縛るもの、「法律」は国会で議論して政治をする人たちが作って、私たちが縛られている。そういうものです。人のものを取ったら刑法によって逮捕されます。憲法と法律の違いは縛られている人が、「私たち」なのか、「政治をする人」なのかがポイントです。憲法を「法律の親分」「すごく大事な法律」という人がいますが、それは大間違いで、憲法を法律と同じようにしてしまったら、戦前と同じなのです。憲法は「政治をする人がしてはいけないこと、しなければならないこと」を書いて縛っているもので、法律とは違うのです。それを「立憲主義」と言います。憲法は縛っている人が国民なので、「国民主権」と言います。憲法の前文に国民主権と書いてありますが、国民がみんなで話し合わなければいけないので、「民主主義」という言葉も書いてあります。
 政府を憲法で縛って、その結果、基本的人権が守られる。そして基本的人権が守られることで「平和」が得られる。
政府を縛った結果、人権が守られ、平和な世の中になるということになります。

■歴史から憲法の価値を学ぶ

 私たちは、水や空気の存在を意識しないで生活しています。しかし、私たちは水や空気がなかったら生きていくことができません。同じように私たちは憲法の存在や価値をほとんど意識しないで生活をしていますが、憲法がなくなったらどうなるでしょう。憲法がなくなったらどうなるかを考えると、今の生活と憲法の結びつきが良くわかります。一番簡単なのは戦前の歴史を学ぶことです。戦前の歴史を学べばシュミレーションをすることができるからです。例えば「法律の範囲内で表現の自由が保障される」という戦前の時代だったら、どういうふうな表現の自由だったのか、弾圧、制限があったのかどうかを学ぶことで、今は表現の自由があるけれども、それがなくなったらどうなるかを考えるには非常に良い学習かと思います。

憲法改正と私たち

  改正の内容も大切ですが、変え方も大事です。96条にはこのように書いてあります。

 「この憲法の改正は、各議院の総数の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に対 してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする」

 まず国会議員の3分の2以上が「良い」と言わなければならない、でもそれだけでは憲法改正はできない。国民が主権者ですから、国民に提案して承認を得なければならないのです。それが国民投票ということになります。確かに国民全員で憲法改正の議論をしてもまとまるはずはないので、国民の代表である国会で話し合って提案するのは合理的だと思います。ただ、国会議員は縛られている人達なのです。縛られている人が、「このように縛り方を変えてくれ」と国民に聞いてきているということです。それが憲法改正の発議なのです。だから縛っている主権者は、「その提案は縛りをゆるめようとしているのではないか、そもそも縛られようとしていないではないか」というネガティブチェックをしなければいけないのです。

■国民投票について

 国民投票は国会発議から2ヵ月から6ヵ月、60日から180日以内に行われます。ですから国民投票が決まってから学習会を開いても間に合わないのです。投票はYESかNOか、〇 か×かです。どういう提案をしてくるかは国会で決められて、例えば今、自民党が考えている4つの項目、「九条の問題」「緊急事態条項」「参議員の選挙区合区の問題」「教育の充実(一部無償化を含む)」が挙げられていますが、それを一つ一つ切り離して〇×とするのか、一括して〇×とするのかという提案の仕方も国会で決めるのです。一括の場合は、「教育は充実させた方がいいから〇」というような方法でやられてしまうと、九条もセットで〇ということになり、変わってから後悔しても遅いということになります。だいたいセットにするときは「飴と鞭」を抱き合わせにするのです。ですから提案の方法もチェックをする必要があります。
 もう一つは、有権者の過半数ではなく、有効投票をした人の過半数で決まることです。今投票率は非常に低いのです。最近練馬区で区長選挙と区議会議員の補欠選挙がありましたが、投票率は30%でした。練馬区のように30%しか投票に行かない場合は、その過半数のわずか15五%で憲法改正ができてしまうのです。投票に行かないと、それは賛成したと見なされることになるのです。そのことを肝に銘じて、まわりの人にも投票に行くように伝えてください。

■自民党憲法改正案

 憲法改正の具体的な案が自民党から出ています。「自民党憲法草案」には具体的な条文が出ていますが、おそらくこういう方針でいくものと思われます。特に気になるのが、「九条」と、草案には「緊急事態対応」と書かれていますが、「緊急事態条項」です。戦前のドイツや日本のことを考えれば、非常に私たちの生活に直結しています。「参議院の合区解消」というのは、今まで参議院は一県に一人の代表を選んでいたのですが、一票の格差の問題があって人口の少ない県は二つで一人を選ぶという改正がなされて、実際2016年の参議院選挙の時は鳥取と島根、高知と徳島が一つになっています。これを止めて一県から一人を出しましょうということです。「教育の充実」は、ややトーンダウンしていますが、政府が積極的に取り組むという内容のようです。

■九条について

 一項二項が残っているから良いではないかという人もいます。でも自民党改憲草案を読んでいただければわかるのですが、九条の2として「前条の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」となっています。前条の規定は九条の1項と2項です。九条の2項には戦力は使っても、持ってもいけないと書いてあるのです。「そうは書いてあるけれども必要な自衛の措置をするには別にかまわないのだ、それは例外なのだから九条の1項2項は適応しない」ということです。ということは、1項も2項も空文化するということです。必要な自衛の措置って一体なんですか。「地球の裏側で我が国を狙っている国があります。撃たれたら、そのミサイルを撃ち落とすのは研究していますが難しいです。だったら撃たれる前にその国をやっつけましょう。それが自衛です」というわけです。空母の問題も、長距離ミサイルの問題も、その時の国際情勢に合わせて、各国の持つ兵器、装備、陣容に応じて必要な事例は変わってくるのです。つまり何でもOKなのです。必要だといえばOKなのです。必要な自衛の措置というのがどれほど王様を縛っているのか、甚だ疑問です。
 ですから1項2項が残っているからといって、改憲をすることで、「災害救助で頑張る自衛隊を憲法で認めましょう」という結論だけが果たされるのかというと、そうではない。自民党は自衛隊を、単に現状肯定するというに留まらない「必要な自衛の措置」という曖昧な言葉で、今の自衛隊ができないことをもっとやる。集団的自衛権の行使についても、「必要な措置」に入ると自民党は明確に答えているわけですから、非常に不安だと思います。
 ネガティブチェックの観点から言うと、これは許すべきではないと思います。                         (文責 小沼)


三千万署名、達成めざし頑張ろう  
         「九条の会」の集会に全国から千人が集う     

 「九条の会」は、四月七日、「安倍九条改憲NO!三千万署名」の達成をめざし、改憲発議を阻止しようと東京都北区で大集会を開きました。「九条の会」の全国集会は久しぶりですが、全国から千人が参加。会場いっぱいの人で盛り上がりました。
 三千万の署名と言いますが大変な数です。しかしこれをやり遂げたら、安倍たちに、改憲はとても駄目、と国民の気持ちを思い知らせることになります。この署名の大切なことを改めて確認。署名をやりとげ、安倍政治.にとどめを刺そうと語り合いました。改憲阻止のための大きな集会だと思いますが、このような集会のことはメディアではあまり報道されません。ぜひこのような会のあったことを皆様に伝えていただき、もし、お友達などで、まだ署名をされてい
ない方があったら、署名を進めてくださいませ。
 またこの会には、女性「九条の会」も、受付やカンパ集めなど、裏方の仕事で、がんばりました。

 自民党は三月二十五日の大会で「憲法改正を目指す」との大会方針を決定しました。この状況を受けて、小森陽一・事務局長は、「自民党案の危険な内容を対話で国民に伝え、三千万署名をやり遂げよう」と、力強く呼びかけ、開会。
 最初に語ったのは、呼びかけ人の澤地久枝さんです。「いま、憲法を守るぎりぎりのところに来ている。九条を守ることは憲法全体を守ること」「日本の政治は、もうぼろぼろ。なんとしても安倍を引きずり降ろさなければなりません」。
 七十三年間、一人の戦死者も出さなかった、日本の戦後の歴史を強調し、「この素晴らしい〝歴史〟を何としても守りたい」。
 「九条の会」の呼びかけ人は次々に亡くなられ、大江さんも今体調が悪く、久しく集会に出ておられません。澤地さん孤軍奮闘という形で.頑張っておられます。しかしお元気なこと。大きな声で、力を込めて三千万署名達成に力を振り絞ろうと訴えました。
 次に、世話人七人――、愛敬浩二、浅倉むつ子、池内了、池田香代子、伊藤千尋、清水雅彦・山内敏弘さんが語りました。どのお話も素晴らしかったのですが、全部を紹介するスペースがありません。
いくつかを紹介しますと・・・・・。

 浅倉むつ子さん(早稲田大学教授)は、憲法九条と二四条が日本の非暴力を支えてきた。国家の暴力を否定したのが九条、家父長的暴力を否定したのが二四条、と。そして、今、安倍政権の教育への介入が目を覆うばかりになり、道徳教育の強化で個人の尊厳が否定されようとしている、と危機的な状況を語ります。

 池内了さん(名古屋大学名誉教授)は安倍政権は、武器輸出を原則容認に変えたが、反対運動で、現在まで武器輸出は成立していない。「軍学共同」に対しても、三〇以上の大学が防衛省の軍学共同の制度に応募しないことを表明している、と大学の抵抗の様子を伝えます。

 伊藤千尋さん(元朝日新聞記者)は、全国各地で九条の碑がつくられている、最近作られたものも多い、と。今全国で十八もあり、そのうち七つが沖縄にあるそうです。
「先日、茨城にある碑を見に行った。日中戦争で亡くなった人の親類が建てたもので、日本国憲法があればこの人は死ぬことはなかった、それを示すために作った、と言われた」そうです。
 
 この後、全国の九つの「九条の会」から署名集めに奮闘しているさまが伝えられました。
 「今までの署名と違う、ここで、安倍政権の息の根を止めよう」と小さな町で、一軒一軒訪ね歩き、「最大の防御は無防備であることだ」と説得し署名しているなど、かつてない規模、熱く燃えて、署名を進めているさまが発表されました。
 憲法を守る首長の会、東北六県首長の会連合は、東北で進められている署名の様子を報告、全国の首長に交流会を呼び掛けていると、大変力強い報告もありました。
 北海道の九条の会のネットワークは、北海道の署名目標の百万人分に対し、もう三十五万二千人分とったと報告、このネットワークには百二十五の九条の会が参加しているそうです。
 どこでもチラシを配ったり、高校の前で宣伝したり、宗教者のリレートークをやったり、工夫を凝らしているようで、元気が出る報告が続きました。
 最後に事務局の高田健さんから、四月二十五日に署名の第一回集約を行い、五月三日の有明防災公園での憲法集会で署名数を発表する、と発表。一人でも多くの署名を集めようと誓い合いました。なお、署名は五月末迄続けられます。

■さらに一票を

 読者の皆様は、もうすでに署名は済まされていると思います。けれども、五月三日の発表は、一三五〇万筆でした。まだまだ三千万にはほど遠い数です。今は本当に大事なときになっていると思いますので、お友だちに声をかけるなど、もう一踏ん張り頑張りましょう。

 

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